巴里祭を終えて

「忙しいの文字は心を亡くすと書くのよ」と忠告してくれた友人がいました。故人となった彼女の言葉が聞こえる。自己の持ち時間を自分のことだけに使い続けたことの後悔が身近な人を失った時に溢れる。「よく頑張ったよ」と夫はいつも慰めてくれるのだが、思いは長い間私を苦しめる。

迷いながらの開催を決めました。初心に還って少し個性的なステージにしたい。
誰にお願いしたら良いのだろう。ふと浮かんだのはナポリターナ歌手天地りつ子さんのリサイタル『歌物語コンサート』でした。台本を執筆し、構成を担当、語り部でもある伽二俊五郎氏にお願い出来たら。コンサートの度に聞くあの渋く深い味わいのあるナレーションの声の持ち主はどんな方なのだろうと、いつの間にか私はすっかり伽二氏のファンになっていました。
実姉の天地さんにご相談しましたが残念なことに病に臥せっておられ回復は見込めないとの由。

舞台を構成できること、シャンソンをよくご存知のこと。私の交際範囲に演出家は存在しません。
演劇畑出身、ロシア歌謡の歌い手山之内重美さんに話しててみようと思いました。大学の講師もしておられる超多忙な方で特別親しくしていただいているわけではありませんが私が一方的に大好きな方です。
彼女が出演しているライブハウス終了後、荻窪の居酒屋で舞台作成の協力をお願いしました。「そんなの無理、無理!」の拒否を終電まで口説き「30%の可能性」を引出しました。これを100%に導いてくれたのはDVD『歌物語コンサート』の伽二俊五郎氏だったと思います。。

試行錯誤の構成が始まりました。例年より二月遅れのスタートです。
テーマは?フランス革命、ああ無情?・・・
それぞれが時を違えてシベリア鉄道経由でパリへ旅した女たち3人を描いた森まゆみ著『女三人のシベリア鉄道』をモチーフにの提案は山之内さん。
中条(宮本)百合子…私は少女の頃百合子の全集を夢中になって読んだけど…今彼女を知る人は少ないし、放浪記は作者の林芙美子より女優の森光子の方が知られすぎている。観客としては与謝野晶子だけがわかりやすいので・・・は私。

《巴里へ!1万2千キロ 歌人与謝野晶子の恋の旅歌》が決まりました。
「一緒にやるって言ったじゃない」
「プロにお任せしたい、船頭は一人が良い」
「私はプロじゃない!」
山之内さんの可愛い叫びや、やり取りがいろいろありました。出演の堀内環氏のアドバイス、ご夫人の多大なご協力、ピアニスト中上香代子さんや出演の方々の発想、に加えて「おもしろそう」と田嶋陽子さんの特別出演も承諾いただきました。 初めてのお付き合いの舞台監督さん、音響照明の方も長時間のリハーサルに心を込めた助言とお付き合いをいただいて、みんなの巴里祭、私たちの巴里祭のステージが出来ました。

「良かったよ」「楽しかったわ」お客様の言葉が何よりも嬉しい関係者一同です。
ありがとうございました。

1200_20回巴里祭打ち上げ

 写真は前列左から 真央はるか、林えみ、内山ゆ里子(私)、田嶋陽子、南条桂、中村のりよし、天地りつ子、飯田(カメラマン)、 後列左から山之内重美(構成)、井出リエ子