沙羅からのお便り 2015年6月8日

寒い季節が終わったら、桜を追いかけている間もないほど急ぎ足で春が過ぎてゆきました。

今年は「市川巴里祭」をお休みすることにしましたら、ゆっくり過ごす時間が多くなり、外出の機会もふえました。 新緑の森林浴も良いけれど、久しぶりの銀座はやっぱり好き。昔ほどではないけれど、着物姿の粋な女性がネオンの街にちらほら見えて、ジャズを奏でるサックスの音を聴いたりすると「やっぱり飲もう!!」と元気になります。 「銀座ライオン」の変わらないざわめきは昔のままで、見慣れた「連れ」の顔がいつもより元気に見えたりして・・・。昔はよくお酒を飲みました。 私は堀内環氏が歌う、♪モンマルトルのアパルトマンノ窓辺に立ち♪~で始まるシャンソン「ラ・ボエーム」が好きです。

若い頃新宿の建築設計事務所に勤め、牛込柳町に住んでいました。今よりもっともっと、貧しかった。でも不幸だと感じたことはありませんでした。 夜ごと映画館に通い、イタリアやフランスの街にあこがれ、スクリーンで語られる大人の恋物語を十分に理解したような錯覚におぼれていました。 自立した女性」になりたいと夢をみていました。 夢を食べて生きていたように思える私の青春でした。 街並みは変わったけれど、やはり新宿の夜は心がざわめく。 「新宿は怖い街」と言われることがあります。「新宿は怖い街」ではなく「怖いところもある街」・・・危険・安全の境目を知ることは、故郷の九十九里浜で荒波の澪の口を見分けて遊ぶのと似ていたような気がする。「危険区域はこの先!」・・・みたいに。

車ではなく電車をを利用することが多くなりました。 東京オリンピックの開催が決まって、準備が進められています。 安全な国、礼儀正しい国・・・。自国他国ともに認めてもらったような雰囲気がありますが、ほんとうにそうでしょうか?

電車に乗るとき、私は高齢者用の「優先席」の方に乗ります。元気な方の一般席を占有しないように。 しかし、たいていの場合、一般席が空いていても優先席には中年、若者が座って、スマホに夢中か、多くの方は眠ったような感じで座っています。 私は元気ですから「ま、いいです」 でも体が不自由になった友人などが一緒のときは「恐れ入ります、替っていただけませんか」と声をかけます。不機嫌そうに立ち上がる若者。 優しい国というにはほど遠いような気がします。

私は年を取ったことを理由に何かを求めたり主張するつもりはありませんけれど、日本の若者の多くは、自慢できるほどのモラルを持ち合わせていないように感じます。

年を重ねてみて分かることがあります。弱さ、悲しさ、むなしさ、そして悔しさも・・・。私も若い頃、周りに優しくなかったかもしれません。これからでも優しくなれるかもしれない。心して暮らします。

沙羅 店主